引越し業界がブラック企業と騒がれて、いろいろとニュースになっています。
その中でも話題の週間ポストに掲載された「アリさんマークの引越社」ミスした社員にカネ請求の実態の記事は読まれたでしょうか?
今回は引越し屋として長年勤めてきた管理人が、業界の内情を暴露したいと思います。
引越し業界は全てブラック企業であるのは当たり前の事実
ブラック企業の定義は何でしょうか?私が知りうる知識だけで考えると引越し業界は総じて「ブラック」です。
「ブラック」ではない引越し会社を教えて欲しいと言いたい程に、総じてブラックであるのです。
それこそ黒のなかの黒、キングオブブラック、漆黒など最上級の表現を使うのが正しいと言えます。
引越し業界は薄利多売
例を出して考えて行きますが、単身向けの引越しは2トントラックを使用する事が多くあります。
その場合の例として、繁忙期以外の各社料金設定は2万円前後の料金で競っています。それこそ1万円弱の料金が出ることもあります。
2トンの引越しに必要な経費
- 人件費2名分
- トラック燃料代
- ダンボール代
- 宣伝費
- 情報紹介料
人件費だけを考えても1件の引越しあたり2トン車2名の計算で、10000円から15000円は掛かります。
そこに他の経費を考えると20000円は掛かることは容易に想像できると思います。
引越しの経費をどこで抑えるか
これだけ利益が出ない状況で、各引越し会社はどの様に利益を出すことが出来るのでしょうか?
通常で考えれば利益を出すことは非常に難しく、かなりの経費削減をしなくては経営が成り立たちません。
そのためブラック企業である引越し業者は色々と策を練るのです。
- ダンボールの有料化
- ダンボールの無料配布は中古使用
- ダンボール回収有料化
- 高速道路を使用しない
- 梱包資材を極力使用しない
- 1台あたりの引越し件数を増やす(通常1日1件~2件を3件~4件に増やす)
- 人件費削減
梱包資材は極力使用しない
経費の圧迫になる為に梱包資材の使用に関して、いろいろな梱包資材を使わず基本的に毛布だけを使う引越し会社が存在します。
たしかに確実に経費削減になるのは事実ですが、大手引越し会社でこの方法を実現することは難しいと言えます。
なぜなら全ての荷物を梱包する事を謳っている大手引越し会社にとって、梱包することは他の引越し業者との差別化であり、生命線であるためです。
そんな生命線である梱包をしないわけにはいきません。
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1台あたりの引越し件数を増やす(通常1日1件~2件を3件~4件に増やす)
分かり易い話です、とにかく1台の稼ぐことが出来る金額を増やす為、取り扱う件数を増やすのです。
1日2件行う引越しを1日4件に増やすことで、単純に考えれば倍の売上が発生することになります。
とにかく引越し作業員に無理をさせる事によって収益化を計るということです。
しかし件数を増やすデメリットとして、作業は順調に進みません。その結果いつまで経っても来ないトラックに対してクレームが入る事が多々あります。
そんなクレームも引越し会社にしてみれば知ったことではなく、収益化するためにはとにかく数を無理矢理でもこなす必要があります。
3~4件目の作業開始時間に関しては時間帯フリー契約にしているため、当然のように夜の19時~21時くらいにスタートすることは良くあります。
しかし時間の遅れなど営業時に話しをしているため、営業サイドとしては契約を取ってしまえばどうでも良いのです。
そんなことは双方の合意の上なのですから。
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疲弊する作業環境が一番の問題点
引越しの作業員は1~2件の引越し作業で疲弊し切っています。
当然ですが、3~4件目の引越しではどの様なひどい作業に成るかは容易に想像ができます。
引越し作業員とはいえ体力には限りがあります。間違っても賃金を貰って働いているからといって、従業員は無限大に体力がある訳ではありません。
一般の方と変わらないただの人であり、皆さんよりも体力が無い作業員も多く存在するのです。そんな作業員達は疲労が溜まり気力が無くなっており、ミスが起こる可能性が極端に上がります。
遅い時間帯の引越し作業の弊害として近所からクレームが入ることもあります。
しかし引越し業者としては上手いこと営業をして、夕方から夜に行う引越しを受注しなくては利益が上がらないのです。
人件費削減が一番効果的
一番即効性のある経費削減は人件費です。
人を効率よく使うことは工場の仕事ではあるまいし現場作業では無理があります。
ある程度の人数を用意しなくては引越し作業を円滑にすすめることは出来ません。現実問題として作業人数を削減する事は不可能であるのです。
経費削減を可能にする方法
引越し作業の人数を削減することは難しいため、給与を減らすことが一番効果的です。しかし最低賃金は法律で決められているので限界があります。
それでは引越し業界がどの様な経費削減方法を行っているかは簡単なことです。
会社から出て行くお金を従業員にて負担させることで、経費削減については大幅に解決することが可能になります。
従業員に負担させ問題になっているのは、引越しの時に起こる荷物や家屋の「破損」と運転中に起こる「事故」にかかる費用です。
会社が払うべきお金を従業員に払わせることで、引越し業者は成り立っています。
もし会社がすべてを負担することになれば、間違いなく潰れることになります。もしくは引越しの代金を現在の倍くらいに値上げしないと存続は不可能と言えます。
信じられないかもしれませんが、これが引越し業界の真実であり闇です。
ブラックの定義に当てはまる職種と内容
再度考えますが「ブラック」とは何でしょうか?
私の職歴は「ブラック」しかありません。では「ブラック」とはどの様な職種があるのでしょうか?
- 引越し
- 運送
- 介護
- 飲食
- サービス
- 不動産
- 住宅
- 小売
- アニメ関係
- 美容
候補を出せばキリが無いのでが、いろいろと考えていくと全ての企業が「ブラック」になってしまいます。
もう世の中すべてが「ブラック」に思えるほど凄まじいのが現実の世界と言えます。
「ブラック」の内容
- 労働時間が長い
- 賃金が少ない
- 休日取得できない
- 有給が使えない
- 個人弁済が発生する
- 責任だけ負わされて低賃金(名ばかりで責任だけ負わされる管理職)
ちなみに引越し業界の大半はすべての項目に当てはまります。
ブラック業界に低価格を求める弊害
みなさんマクドナルドはご存知ですか?低価格を推し進めた結果はご存知の通りの凋落です。
追記:マクドナルドは現在従業員に対して賃金を多く払うことで業績がV字回復しています。
参考 キャリコネニュース
では他の業界には当てはまらないのでしょうか?
引越し業界も低価格を余儀なくされています。つまり手を付けてはいけない部分まで手を入れ従業員は大変な状況になっているのです。
当然良いものが提供できる訳がありません。ただ従業員は一生懸命仕事をこなしていることは事実です。適当にやろうと思って仕事はしてはいません。
しかし気持ちだけでは限界がある為に無理がたたり、破損や事故を起こしてしまうのです。
そして弁済……。
消費者が安いものを求め企業が低価格を打ち出す、そして最悪の結果になるというマクドナルドに見る最悪な展開が今引越し業界に蔓延しているのです。
安いことが正義という考えを変えない限り未来はない
真剣にお客様の引越しを考え、プランニングする営業マンの提案を聞き入れてみて欲しいです。
買い叩いたプランに良いものが有るはずが無いと思いませんか?いたってシンプルな考え方です。
いい加減「安いが正義」という考え方を改めていかないと、巡り巡って自分のところに返ってきます。
経済とは循環しているのです。
まとめ
引越し業界は総じて「ブラック」
しかし従業員は耐えがたきを耐え頑張っています。
従業員には罪は無いが頑張りには限界があります。
是非応援してやって下さい。
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